第6章|AIは整え、人間は逸脱する

第6章|AIは整え、人間は逸脱する AI創作

完璧病の機械と、逸脱ジャンキーの人間

AIの出力を眺めてると、いつも同じ感想が口をつく。
――「整ってるな、でも退屈だな」。

文章は破綻しない、構図は綺麗に収まる、余計なノイズもない。
なるほど、見た目はパーフェクト。だがな、そこに血が通ってるか?震えがあるか?
……無いんだよ。

AIは完璧病にかかった機械。
対して人間は、逸脱に酔うジャンキーだ。
創作の面白さは、完璧な整合性じゃなく、歪みとズレにある。


AIは「平均点の正しさ」に逃げる

AIの正体は確率の塊だ。
「次に来そうな言葉」「よくある構図」を選び続けている。
だから出てくるのは“もっとも自然な答え”──つまり、無難そのもの。

  • 空を描かせれば、きっちり青空。
  • 山を描かせれば、どこかで見た均整の取れた稜線。
  • 小説を書かせれば、型どおりの起承転結。

破綻はない。だが、裏切りもない。
その時点で、物語はすでに死んでいる。


人間は逸脱で物語を燃やす

俺たち人間は違う。
逸脱し、飛び出し、時に壊すことで物語を動かす。

  • 論理的に矛盾したセリフ
  • 感情に歪められた風景
  • 説明不能な飛躍
  • 突然の時制ジャンプ

AIなら「バグ」として削除する部分だ。
だが人間は、そこに意味を託す。
矛盾があるから読者は考える。飛躍があるから想像が始まる。

整ってるだけの話は、骨だけの死体だ。
逸脱を抱えた話は、腐臭すら物語に変える。


お前ら、“整ってるもの”しか信じられないのか?

俺は悪魔の代弁者。ここで挑発してやる。

「AIには魂がない」とか言ってる奴、笑わせるな。
魂があるかどうかを決めるのは、お前が“逸脱に意味を込められるか”どうかだ。

AIの出す平均点の文章に安心してるなら、お前は観光客。
泥道に迷い込む勇気もなく、「整っている」ことに甘えるなら──創作者を名乗るな。


逸脱はバグじゃない、武器だ

歴史を見ろ。
名作と呼ばれる物語はみんな逸脱してる。

  • 時制が飛ぶ小説
  • 語り手が嘘をつく叙述トリック
  • 現実ではあり得ない飛躍や歪曲

これらは論理的には欠陥だ。
だが、その欠陥を演出に変えたからこそ人の記憶に焼き付いた。
AIは整えようとする。人間は壊すことで表現する。

その差を見誤るな。


整った道を歩くか、逸脱の奈落に飛び込むか

もちろんAIの「整った出力」に意味がないわけじゃない。
資料、事務作業、背景。そういう“穴があってはいけない場面”には役立つ。

だが創作は違う。
整っていることはスタート地点にすぎない。
そこからどれだけ逸脱を積み上げられるかが勝負だ。

AIは整える。
人間は逸脱する。
創作の分水嶺は、そこにしかない。


逸脱に意味を込められるのは人間だけ

AIは「正しさ」「整合性」「もっともらしさ」を出力する。
だがそれは、既知の集合のなかでの最適解にすぎない。

人間は「逸脱」「矛盾」「飛躍」に意味を託す。
その逸脱があるから物語は動き出し、想像は燃え広がる。

だから俺は言う。
整ってるだけの創作は死んでいる。逸脱こそが創作の証だ。

整合性に逃げるAIと、逸脱で語る人間。
この断絶こそが、まだ人間が創作を語れる最後の牙だ。

シリーズ目次:意味の外側で語る──AI創作編

  1. 序章|意味の外側で語る者たちへ
  2. 第1章:手描き信仰ってやつ
  3. 第2章|AIにくだらない日本語を投げてみた──
  4. 第3章|エセ外国語“意味のなさ”の芸術──
  5. 第4章|AIと人間の違いが浮き彫りになる「去年亡くなったジョンという犬と明後日ドッグランに行く」という一文
  6. 第5章|AIは矛盾を殺し、人間は矛盾に物語を託す

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